けせらせら

なるようになる?

悪い人

 

生まれ変わったら猫がいい ううん 生まれ変わるとかそんなの信じてないけど 猫に生まれればよかった あの人の足元に身体を擦りつけて 腹が減れば にゃあ とガムシロップくらい甘い声で甘えるのだ 玄関であの人の帰りを待ったり 枕元に寄り添って 気づけば抱かれながら寝たり 飼いならされたまま 空調の効いた部屋のまま 時間とかお金とか 将来とかその類のもの プレッシャー 劣等感 何も気にしなくていいから 僕が鳴けばあの人も鳴いて あの人が泣けば僕も泣いた なんだかとても虚しくなって 情けなくなって いくらでも時間はあげれるのに いくらでもお金は使えないことに気づいた僕は いつのまにか人としての尊厳を失っていたみたいだ お金があることが将来性なんだと お金でしか人を幸せにできないと それを知ることが20代なら 僕はこの先 裸足に泥つけて 日に焼けて 土の城を作っては壊した毎日を回顧し続けるんだろう あの人が求めていたのは今を過ごす為の時間ではなくて 将来を過ごす為のお金だった それを与える術がない僕はあの人にとってもはや人ではなく 何らかの娯楽の一種として認識されていたのだろう

悪い猫だった 人にすらなれない